100年で1センチメートル成長するといわれる鍾乳石。悠久の年月を費やし、石灰岩と浸食の力によって形成される鍾乳洞は、人間の想像をはるかに超えた壮大な自然の造形美です。美しくも普遍的な自然に涼や癒しを求めて訪れることが多い鍾乳洞ですが、さまざまな願いが叶うパワースポットとして知られる鍾乳洞もあります。今回は、そんな大自然が作り出した絶景だけではなく、運気が上がると評判の願掛けスポットも合わせ、知る人ぞ知る日本全国の鍾乳洞を選りすぐってご紹介。

冒険心とロマンをくすぐる神秘に満ちあふれた不思議な世界で、大地のパワーを感じてみてはいかがでしょうか。 

関東最大の長さを誇る鍾乳洞「不二洞」は、群馬県上野村の川和自然公園内にある県の天然記念物です。鍾乳洞の総延長は2.2キロメートル。そのうち700メートルが見学コースになっており、鍾乳洞内の見学所要時間は40分程度です。

洞内は幻想的な空間が広がっており、コースの中間には「7回撫でて願い事をすると叶う」といわれる石柱「閻魔の金剛杖」があるので、忘れずに願掛けをしましょう。

また、不二洞のすぐ近くにある「上野スカイブリッジ」は恋人の聖地としても有名。不二洞のある川和自然公園と、キャンプ場「まほーばの森」をつなぐこのつり橋はなんと高さ90メートル。山間を歩いて移動すると、その絶景にまるで空中散歩をしているかのような気分になります。4月～11月の毎日10:00～15:30の間、30分おきにシャボン玉が舞う演出も見逃せません。

奥浜名湖地域に位置する「竜ヶ岩洞」は、およそ2億5,000万年前の地層といわれる石灰岩地帯に形成された、東海地方最大級の鍾乳洞です。悠久の時が生んだ芸術品のような鍾乳洞たち、中でも落差30メートルの地底にある「黄金の大滝」は迫力満点です。ほかにも、ブルーライトで美しくライトアップされた水神様エリア、鍾乳洞のシャンデリアが広がる鳳凰の間など、目を見張るポイントが点在しています。

見逃せないのは「登竜門」。人がひとり通れるぐらいの幅しかない狭い通路ですが、願いを込めて無事通過することができれば、願いが叶うのだそう（迂回用の別ルートもあり）。案内板には「古来人は夢を求めるものなり、しかれど苦難多くしてその行く先狭き門なり、衣のすそを引きて志さまたげられども苦して抜け出でたるを竜となす」と書かれており、「成就のあかつきにはご一報を！」という一文も。ぜひ願掛けに訪れたい場所です。

岐阜県郡上市天然記念物に指定されている、立体迷路型の鍾乳洞。一般観光ルートは40分程度でまわることができますが、世界でも珍しいタテ穴の鍾乳洞のため、ほかの鍾乳洞にくらべて階段が多いのも特徴です。ほとんど人の手が加えられていないので、2億5,000年以上をかけて作り上げてきた造形美と壮大なスケールに圧倒されるはず。本格探検にチャレンジしたい人は、専用のヘルメットやスーツを着用し、照明のない洞窟探検（ケイビング）ルートもあります。

また、2014年には「プロポーズにふさわしいロマンチックなスポット」として「恋人の聖地サテライト」に選定されており、鍾乳洞の出口にある頂上展望台に設置された「しあわせの鐘」や「こだまのスポット」も見逃せないポイントです。このほか、鍾乳洞内には安産の守り神や希望のカメ、愛のトンネルなど、自然のパワーを感じられるポイントが満載です。

岡山県の天然記念物に指定されている「満奇洞」は、あらゆる種類の鍾乳石が一堂に会する貴重なスポット。名前の由来はかつて歌人の与謝野晶子が「奇に満ちた洞」と詠んだことから名づけられました。自然の力だけで生み出された芸術的な空間は、色とりどりのLED照明による幻想的なライトアップと相まってまさに圧巻のひと言。この光景は、テレビドラマのロケ地としても使用されたこともあります。

入り口の岩がハートのシルエットを描き出し、まさにロマンチック。2019年に「恋人の聖地」に認定されています。ほかに洞内のいちばん奥には「恋人の泉」もあります。恋愛以外にもご利益が期待できそうなので、ぜひ試してみましょう。

神々しさ満載の鍾乳洞に加えて、個性的な見どころが凝縮されたアミューズメントスポットがこちら。

3億年前の古生代から続く鍾乳洞は、30万年前に起こった阿蘇火山の大噴火により水没し、日本最大級の水中鍾乳洞になりました。とはいえ水の中に潜ったりはせず、整備された道を歩いて回れるのでご安心を。内部の水は透明度が高く、奥底まで見渡すことができるので、今までにない神秘的な感覚を味わえます。

鍾乳洞を満喫した後は同じ敷地内にあるさまざまな施設を回ってみましょう。願掛けにおすすめなのは大分県内で屈指の高さを誇る「稲積昇龍観音菩薩立像」。それぞれの苦しみや苦難を受け止めて、諸般の願いを叶えてくれるといわれています。

また「日本名水百選」に認定された白山川沿いでは、毎年6月になるとホタルが見られることも。鍾乳洞の見学者はこの天然水を無料で汲持ち帰れるほか、2021年に登場した「テントサウナ」での水浴や水中洞ダイビング・シュノーケリング、キャンプなど、各種レジャー体験も楽しめます。

美しいものには美しい魂が宿るといいますが、その場にいるだけで穢れが落ちるような気分を味わえる鍾乳洞は、まさに最強のパワースポットともいえそうです。ご紹介した5つの鍾乳洞は、昔から自然崇拝の対象にもなっている場所でもあるので、自然の造形美に見惚れるとともに、願いごとを託しに訪れてみたいもの。

悠久の時を感じられる鍾乳洞は、日頃のネガティブな感情や心身の疲れを癒してくれるだけでなく、自然のパワーをいただきモチベーションを高めるきっかけとしても最適です。陽の光が入らず滑りやすい洞窟内では、くれぐれも足元に気を付けて楽しみましょう。