エデュテック(Edutech *EducationとTechnologyを組み合わせた造語)の分野は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックにもかかわらず、直近1年間で急成長しています。対面を基本とした従来型の教育機関やトレーナーの指導を受けるスポーツジムなど、多くのサービスがデジタル化に向けて奔走していることが、成長を後押しする要因となっています。世界のエデュテック業界の評価額は、2020年時点で894億9,000万米ドルあり、2021年から2028年までの年平均成長率(CAGR: Compound Annual Growth Rate)は19.9%になると報告(*外部英語サイトへ移動します)されています。
このような世界的な需要の高まりは、起業家や投資家にとって資本を投入する格好の機会となります。しかしその一方で、急激な成長によっていくつか課題が浮き彫りになっています。
そのような中、シンガポールのエデュテック企業であるKnovo社(以下、Knovo)は、教育サービスを受ける学習者がデジタル化のメリットを十分に享受できるように、解決すべき3つの課題に挑んでいます。オンライン教育の合理化をはかるためにエデュテック業界の各社がこぞって革新を続ける中、Knovoはどのような取り組みを行っているのでしょうか。
細分化が進む教育コンテンツを集約して「ワンストップ」で提供
2021年1月現在、世界人口の約60%(*外部英語サイトへ移動します)がモバイルデバイスを介してインターネットにアクセスしていると報告されています。インターネットを介して数百ものエデュテックプラットフォームにアクセスできるため、一般的な学生や社会人は、どのプラットフォームが自分に適しているのかを見極めるのは難しいことです。
そのためエデュテックプラットフォームでは、インターネット上の教育コンテンツをフィルタリングするのに役立つデータ集約やアダプティブラーニング(適応型学習)といったテクノロジーが重要になります。また、エデュテックサービスを提供する企業の増加に伴い、学習管理システムが多岐に存在するようになり、業界の細分化が進む結果となっています。
重要なのは、学生や専門家、教育者が質の高い教育ツールにアクセスできるようになることであり、それによってeラーニングの包括性を推進することです。
同社のVirtual Interactive Knowledge Exchange(VIKE)プラットフォームは、エデュテック業界の主要なプレーヤーを積極的に集めることで、「ワンストップ」学習システムの提供が可能です。ユーザーは教育コンテンツや学習リソースのリポジトリを利用して、リアルタイム配信または事前収録コンテンツのどちらでも学習することができます。
また、エデュテックは、学習者が自分のペースで教材をオフラインで利用できる「反転学習」を可能にしますが、Knovoでは、学生が教育者と連絡を取れるようにすることで、有効的な学習の実践とリアルタイムでの交流を可能にしています。これにより、順応性の高いデジタル教育コンテンツの提供が可能になるほか、学生と教育者の間に「教育社会的」な体験が生まれるのです。
Knovoは質の高い「正しい」教育者の提供に注力
フィルタリングされていない教育コンテンツの細分化は、「正しい」教師との出会いを困難なものにします。私自身、正しい教育指導者と出会えたことで数学の成績がFからAへ上がり、その後は学歴にも恵まれ、多くの職業選択肢を得ることができました。このような経験は私以外にも言えることであり、特にアジア諸国では、学校以外の教育に投資することはその後の人生に大きなメリットを与えてくれると多くの親が信じています。
しかし、パンデミックによるロックダウンや外出制限の強化は、経済的な余裕を搾取し、質の高い教育を受けたいと思っている人たちは困難を強いられています。
そこでKnovoは、シンガポールの複数の有名な教育センターおよび著名な教育者たちとのコラボレーションにより、サービスの行き届いていないコミュニティ向けでも質の高い教育が受けられるような取り組みに着手しています。授業の予約、スケジュール設定、バーチャル学習配信ツール、学習者向けと教育者向けの支払いソリューションなどが一体になった、エンド・ツー・エンドのソリューションを通じて、オンラインでの学習や教育が実施しやすくなっています。
Knovoが目指すゴールは、世界中の学習者が適格な教育者とデジタルでつながり、学習したい人がお金をかけずに質の高い教育を受けられるようにすることです。
労働力の質に見られる格差
今の時代でも、特に開発途上国では、質の高い教育を受けられる人が少ないのが現状です。労働力の質の格差は、生活水準、ビジネス上の意思決定、そして国の経済成長に直接影響を与える可能性があります。これらの問題は教育水準の低さに起因し、人々の考え方や行動様式に影響を及ぼします。
高校までの教育はそれ以後の教育よりも監督責任が大きく、将来的にはブレンド型学習(*オンライン授業などを組み合わせた学習形態)モデルへ移行していくことになるでしょう。高等教育や職業教育においては、学生が仕事に必要なスキルを習得できたり、再教育やスキルアップ教育を容易に受けられるよう、より柔軟な学習方法が必要になってきます。
オートメーションやテクノロジーによって労働市場に変革がもたらされるにつれて、簡単に自動化ができないスキルの習得に重点が置かれるようになります。そのため今後は、キャリアの中で何度も再教育を受ける必要が生じることになるでしょう。そうしたトレーニングのコンテンツを管理・運営し、長期的に再教育やスキルアップ教育を加速させていくために、企業向けの人工知能(AI)を活用したトレーニングセットが増えていくと考えられます。
同様に、高等教育には学生の教育資格や入試の詳細を簡単に記録できるブロックチェーンの活用が期待されます。
ブロックチェーンにより、教育機関での証明書や学生証の記録管理や認証情報の発行方法に変革が起こります。ブロックチェーンは「ビットコインのためのもの」として知られていますが、その応用範囲は、はるかに広いのです。
ブロックチェーンは分散型台帳を用いた安全性の高い技術であり、医療や教育をはじめとする多くの分野に適用できます。エデュテックの潜在能力を最大限に発揮するために、ブロックチェーンの導入を積極的に検討していくべきだと個人的には考えています。
地方の高等教育機関や大学に在籍する学生向けのインターンシッププログラムでは、学生は実際のソフトウエア開発プロジェクトに携わり、実地の講師や専門家から幅広い知識を得ることで、テクノロジー業界やキャリアパスについて理解を深めることができます。
このようなコースは仕事に必要となる業界関連のスキルを対象としつつも、生涯学習を行う人たちのスキルアップや再教育の機会を提供しています。
他のエデュテックサービス企業によるイニシアチブも活発化していけば、Knovoは業界に必要となる人材を提供する安定したパイプラインの役割を果たし、シンガポールをアジアのテクノロジーハブとして確立することができるでしょう。
この記事は、e27のKelly Teが執筆し(初出日:2021年9月7日)、アマナのパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせは、licensed_content@amana.jpにお願いいたします。