ミュージシャンとして生計を立てるのは大変なことです。世界的に「成功」を収めるミュージシャンはわずか0.2%と言われ、90.7%以上が世の中にその存在すら知られていない現状があります。
ミュージシャンにとっては厳しい世の中ですが、音楽の未来はブロックチェーン技術によって、これまでになく明るいものになっています。
パンデミックによる音楽業界の変化とミュージシャンの現状
音楽業界は何十年にもわたって大きな変化がありませんでした。しかし近年、世界中で起こったロックダウンとストリーミングサービスの2つが大きなきっかけとなり、業界に変化が起こり始めています。
ミュージシャンの収入源を大きく分けると、ライブパフォーマンス(30%)、講師(18%)、定額給での演奏(12%)、作曲(11%)、セッションワーク(10%)、レコーディング(7.3%)、商品の販売(1.9%)などが挙げられます。
ところがパンデミックにより、これらの収入チャンネルのほとんどが大幅な減少傾向にあります。
現在、自分の音楽を収益化できる唯一の現実的な方法は、ストリーミングです。世界中の才能あるミュージシャンが作り出した曲や歌を自宅に居ながら聴くことができるリスナーが何百万人もいて、クリエイターはその対価を得ることができるのです。
しかしながら、ストリーミングで1日あたり1,900万米ドルの利益を得ているレコード会社の上位3社に対し、10人中8人のミュージシャンは、ストリーミングでの収益が年間200米ドル未満に留まっています。
ストリーミングの問題点
どのストリーミングサービスもクリエイターに対する支払い額が不当に低いというのは有名な話です。
ストリーミング形式の音楽配信サービスの最大手であるSpotifyは、1回のストリーミングに対して平均0.0003米ドル支払っており、最近その額をさらに引き下げることを発表(*外部英語サイトへ移動します)しました。
アメリカの最低賃金である時給20米ドルを稼ぐには、1時間あたり67,000回という驚異的なストリーミング回数が必要になります。
ミュージシャンも生活費を稼がなくてはなりません。ライブやツアーが主な収入源だった頃は、その後に現金で収入を得ていましたが、そのような選択肢が無くなり、支払いのタームが3~6カ月毎であるストリーミングが主流となった今では、キャッシュフローの問題が悪化しています。
ブロックチェーンは有望な解決策
このようなストリーミングサービスの課題に対処するために、オーディオ・エクスチェンジ・プラットフォームがブロックチェーンに登場しました。これはどのようなものでしょうか?
第一に、同サービスにおけるストリーミング1回当たりの支払い単価は0.01~0.10米ドルです。これは、現在の既存サービスが提供する額の少なくとも10~40倍に相当します。
第二に、支払いは暗号通貨で行われるため、瞬時に行われ、正規の現金(不換通貨)に換金できます。
第三に、スマートコントラクトで構築されていることで、曲の制作に関わった全員が正しく認定され、支払いが公正に行われるという利点もあります。
テクノロジーの付加的存在であるブロックチェーンが、ミュージシャンを悩ませる根本的な問題を解決します。あとはただ、このようなストリーミングサービスが軌道に乗るのを待つばかりです。
キーワードはコミュニティ
何百万回ものストリーミング回数を一晩で記録することができるのは、大手レコード会社の後押しと、そのマーケティング費用の捻出があってこそです。
一般的なインディペンデントのミュージシャンは、自分たちが作り出した楽曲に共感し、応援してくれるファンやコミュニティを組織的に構築することが必要です。ケビン・ケリー(Kevin Kelly)が2008年に述べた「ミュージシャンとして食べていくには、真のファンが1,000人必要だ」という言葉はあまりにも有名です。
ミュージシャンが1,000人のファンを獲得するためには、作曲やツアーを行うだけでなく、深い関わりを持った真のコミュニティへの参加を促す必要があり、ミュージシャン自らが積極的に行動しなくてはなりません。
ソーシャルメディア(Facebook、Discord、Reddit)は、リリース情報を共有したり商品を販売したりするための、単なる宣伝の場ではありません。ソーシャルメディアは、ファンからの質問に答えるなど、双方向の関係を築く場であるべきです。ラッパーのリル・ナズ・X(Lil Nas X)のソーシャルメディア・ゲーム(*外部英語サイトへ移動します)は、ファンを惹き付けるために時間とエネルギーをどのように投資すべきかを示す好例です。
楽曲の権利を管理する新たな方法への期待
音楽には所有権が付いてまわります。かつての音楽は、レコードの売り上げと契約締結がすべてであり、レコード会社が全権を握っていました。
しかしストリーミングサービスによって、音楽にまつわる権利は共有されるようになりました。独立系ミュージシャンとして成功を収めた先駆者であるチャンス・ザ・ラッパー(Chance The Rapper)(*外部英語サイトへ移動します)のような活動形態は、今の時代における新たな可能性を描いています。
妥当性のある収益分配という観点では、そのほとんどがまだクリエイターに享受されていないのが現状です。ストリーミングサービスは、音楽に関する権利を完全に制御できる一元化されたプラットフォームであることが、その理由です。
音楽業界の将来は、ミュージシャンが完全に独立し、作品や配信方法に関する権利をミュージシャンが所有する形に変わっていき、ミュージシャン自らが自身の収益を決めることができるようになるでしょう。
これを実現するのが、デジタルファイルを唯一無二の収集アイテムとしてブロックチェーンに保存できる技術であり、非代替性トークン(NFT: Non-fungible Token)を利用した作品管理です。
Z世代は新しい技術やサービスを受け入れることにあまり抵抗がないため、同世代のクリエイターにとっては、このような方法も生計を立てる1つの手段になり得るかもしれません。
この記事は、e27のJimi Frewが執筆し(初出日:2022年2月28日)、アマナのパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせは、licensed_content@amana.jpにお願いいたします。