要点:OcadoとWayve、協業による具体計画について
- イギリス最大手のネットスーパー「Ocado」は、2021年10月6日に発表されたプレスリリース(*外部英語サイトへ移動します)によると、「複雑な都市環境」に対応する食料品配送自動化に向けた開発を加速させるため、1,000万英ポンド(約1,360万米ドル)を自動運転技術のスタートアップ「Wayve」に出資しました。
- 両社の協業の一環として、Ocadoは商品配送車の一部にWayveの自動運転システムを搭載し、都市部の配送ルートを走行させる予定です。
- Ocadoにとって自動運転技術企業への出資は、2021年だけでもWayveが2社目になります。Ocadoは、米国最大手のスーパーマーケットチェーン「Kroger」が同社の技術を採用しているように、グローバルで事業を展開する小売業者などにも同技術を活用してもらい、各小売業者が配送を自動化できるように働きかけています。
Ocadoが模索する自動運転技術による食料品配送の未来
Ocadoはこれまでオンライン食料品販売の在庫管理、ピッキング、梱包作業の大部分を自動化してきました。今回のプレスリリースでは、配送や物流の自動化も推進していくことが明らかになりました。
同社は2021年初め、自動運転ソフトウェアの開発会社「Oxbotica」に約1,360万米ドルを出資すると発表(*外部英語サイトへ移動します)。その際「物流コストは、オンライン食料品販売の事業コスト構造の中で最も大きな項目となっています」と指摘しています。
OcadoはOxboticaとWayveに出資することで、有望な企業に資金提供しながら同時にコスト削減を可能にする技術進化を目指しています。
2017年に創業したWayveの自動運転技術は、ディープラーニングとカメラを利用するものです。これに対し、現在多くの自動運転技術を開発する企業が採用しているのは、一般に「LiDAR」として知られる、光による検知と測距を用いたシステムおよびセンサーです。Wayveによると、カメラに基づく測量方法はコストを抑えることができるだけでなく、食料品配送で頻繁に通るような、交通量の激しい複雑な都市部の道路の走行にも非常に適しているということです。
ロイター通信によると(*外部英語サイトへ移動します)、Ocadoはロンドン市内を走る同社の配送車の一部を自動運転の走行試験用に改造する予定で、走行試験中は人間が乗り監視するとのこと。さらに一部の車両にはWayveのデータ収集用デバイスを取り付けるということです。
Wayveはこれまでに5,800万米ドルを超える資金を集めており、2022年初めから英食料品小売企業「Asda」と協力して自動配送の試験運用を実施する予定です。
一方、OcadoのOxboticaへの出資は、2017年に両者がロンドンでプロトタイプの自動運転車両を使って試験配送を行ったことが関係性の基盤になっています。両社は現在、Ocadoの配送車や倉庫で使用される車両のデータ収集に取り組んでおり、Oxboticaはこのデータを活用して技術開発を推進します。
プレスリリースによると、Wayveとの協業計画には、ミドルマイルからラストマイル配送における自動運転技術の詳細な調査を目的とする、複数年にわたる提携が含まれています。また、リリースでは「自動運転技術の活用範囲は、当社の『カスタマー・フルフィルメント・センター(CFC)』内とその周囲のエリアで稼働する車両に始まり、ラストマイル配送、そして道路の縁石からキッチンまで商品を運ぶロボットにまで及びます」と述べており、OcadoとWayveは2年以内にプロトタイプの車両を完成させる予定だということです。
近年、自動運転配送車は世間の注目を浴びており、StarshipやWaymoなどの企業が食料品小売企業と提携し、試験的な自動運転プログラムを実施しています。また、予測可能な決まったルートで品物を施設間輸送するという、最も単純なミドルマイル配送については、ウォルマート(Walmart)などの大企業が完全導入に向けて動きを加速させています。そのような中で、Ocadoは、食料品やレストランの料理をラストマイル配送にとどまらず、道路の縁石からキッチンまで、あるいは直接冷蔵庫まで届ける自動運転技術の可能性を模索しているのです。
この記事は、Supply Chain DiveのJeff Wellsが執筆し(初出日:2021年10月8日)、アマナのパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせは、licensed_content@amana.jpにお願いいたします。