電動バイクは、モーターサイクル(自動二輪車、バイク)の未来像です。モーターサイクルの新しいトレンドにはどんなものがあるのか、デーモン・モーターサイクルズ(Damon motorcycles)最高経営責任者(CEO)が本誌TechBullionの独占インタビューで語ります。
――自己紹介をお願いします。
ジェイ・ジロー(Jay Giraud)です。デーモン・モーターズ(*外部英語サイトへ移動します)の共同創業者でありCEOです。同社のアイデアが浮かんだのは、北米と比べてかなり二輪車への依存が強いインドネシアにいたときでした。そこで、今のガソリンで走るオートバイに匹敵するような二輪車をつくるというビジョンを描いたのです。その後、路上での事故を防ぐことを目標に掲げ、二輪車での移動に変革をもたらすために、共同創業者のドム・クワン(Dom Kwong)と手を組みました。
――あなたの、デーモン・モーターズのビジョンについて、聞かせてください。
デーモン・モーターズは、世界で最もスマートかつ安全で、パワフル、かつインターネット環境と完全に連携する電動バイクを開発しました。データドリブンの考え方を取り入れ、センサー融合やロボティクス、人工知能(AI)の革新的な技術を持った人材を採用しました。かつてないほどのレベルの知見と接続性は、個人レベルだけでなく、地域社会全体、世界レベルで事故の削減に貢献するよりスマートで、安全、よりコネクテッドな走りを実現します。
――デーモン・モーターズが業界で他社よりも優れている点、魅力を教えてください。
デーモン・モーターズは、最先端技術を採用して、モーターサイクルに関する意識と安全性において新たな標準を確立しました。私たちが手がけるすべてのシリーズには、次のような独自の機能を搭載しています。
●Copilot™(コパイロット):ブラックベリーQNX技術を搭載。レーダー、カメラ、非視覚センサーを使い、周囲の移動体、最大64個の、スピード、方向、速度を追跡し、未だかつてないレベルの状況認識を実現。
●Shift™(シフト):デーモンの特許技術であるライダーの人間工学に基づいて開発された、ハイパースポーツ(HyperSport)の運転中、ボタン1つでライディングポジションをスポーツモード、通勤モードに変更が可能。
――モーターサイクルの安全性と技術革新の現状と、今後について教えてください。
世界的に見て、モーターサイクルは移動手段として最も利用されており、毎日15億人が、モーターサイクルで通勤しています。自動車と比べると、モーターサイクルによる重傷者数は27倍、死者数は5倍に達します。モーターサイクルに関連した傷害がGDPの3%を占めている国もあります。アメリカだけでも、年間で約9万人が事故によりけがをし、5,000人以上が死亡しているのです。それにもかかわらず、モーターサイクルの安全面については、1988年にアンチロックブレーキが開発されて以来、ほとんど何も進歩していません。
モーターサイクルに乗るということは、常に危険と隣り合わせという状態なので、すべてを自分で見極めるのは不可能だと言えます。そこで、コパイロット360度先進警告システム(CoPilot™ 360˚Advanced Warning System、以下「コパイロット」)が活躍します。コパイロットは危険を監視することで、常にライダーの周囲に何があるのかを直感的に把握し、危険を察知した際には、ハンドルバーを通して触覚的に知らせてくれたりや、フロントガラスに組み込まれたLEDランプ、また常にオンの状態になっている1,080pの高性能バックカメラを通じて警告します。コパイロットは、モーターサイクルに新たな安全性をもたらし、ライダーは乗る楽しみそのものを味わえるようになります。コパイロットの警告システムは、一般道で実施した100人以上のモーターサイクルの運転手を対象に検証した結果、状況認識の向上や、前方・側面・後方衝突の可能性の低減において、100%の有効性が示されました。
――自動車業界では、電動自動車が業界をリードすることによって変革が起きています。モーターサイクルも同じ道をたどっていると思いますか?
私たちは、移動の未来はモーターサイクルにあると信じています。世界では毎年、1億6,000万台の二輪車が販売されています。自動車の倍の数です。同時に、二酸化炭素排出や石油依存を低減するために電気輸送への需要も高まりつつあります。従来のガソリンを燃料としたモーターサイクルは、温室効果ガス排出の最大の原因の1つです。デーモン・モーターズは、二酸化炭素排出や石油依存を低減というニーズを、スマートかつ安全で、インターネット接続も可能な、二酸化炭素排出がない電動モーターサイクルの製品により、満たしています。
――ハイパードライブ(HyperDrive)について簡潔に説明していただけますか? それはなぜデーモン・モーターズにとって重要なのでしょうか?
ハイパードライブは、最高のパフォーマンス、デザイン性、安全性を備えた、世界初の100%電動の多変速パワートレイン・プラットフォームです。モーターサイクルそのものの構造部品として機能するよう設計されています。高速安定性および操作性のために重量配分が最適化されているだけでなく、モーターサイクルの耐荷重フレームとしても機能し、軽量化およびコスト、体積も削減しているバッテリーを搭載しています。今後のデーモン・モーターズ製品のプラットフォームとしても、ハイパードライブは、幅広いモデルやサブモデルに利用できるモノコック構造の高電圧パワートレインです。
――ハイパースポーツシリーズについて詳しく聞かせてください。どのような機能がありますか?
デーモン・ハイパースポーツは、世界で最も安全かつスマートで、インターネット接続が可能な電動モーターサイクルです。ゼロRPMで200馬力、200 nmトルクをはるかに上回り、最高速度は時速200マイル(約322km)です。1回の充電での走行可能距離は、高速道路走行時に200マイル以上。デーモン・ハイパースポーツは、日常的にバイクに乗る人からスリルを求める人まで、さまざまな需要に合うようにデザインされた、比類のない安全性、快適さ、性能をもつ電動モーターサイクルです。
――2030年までに完全な衝突防止機能の実装を実現させるというロードマップについて、詳しく聞かせていただけますか?
ソフトウェア面では、実際に公道を走っているデーモン・モーターサイクルすべてから集めたデータを使い、ソフトウェアのアップデートを開発して、デーモン・バイクのそれぞれにワイヤレスでアップデートを送信できます。これにより、走行距離1マイル1マイルがすべて、デーモン・モーターサイクル全体としての安全性の向上に貢献できることになるのです。ハードウェア面では、当社には衝突防止能力(危機的な瞬間での自動ブレーキと自動ステアリング)を持つモーターサイクルを意図して設計したものがあります。これら2つの開発が融合して実現したとき、世界中にいる何百万人というモータリストにとって新しいレベルの安全性をもたらすことになるでしょう。
――今後、資金調達をする予定はありますか?
最初のハイパースポーツが間もなく公道を走れる段階まできたように、デーモン・モーターズは成長を続け、スタッフ、取締役会、パートナー、投資家の拡大も続けていきます。
――最後に、読者に向けて一言いただけますか。
デーモン・モーターズは、気候変動、安全性、セキュリティといった社会的な問題に取り組む、新しい時代のモーターサイクルにおいてのリーダーになれていると考えています。ハイパースポーツは、比類ない安全機能を搭載した電気100%の個人向け車両であることにとどまらず、「V2H: 乗り物から家へ」(V2H: Vehicle-To-Home)という電力バックアップ機能をサポートし、バックアップ電源や自家発電機としても、モーターサイクルの活用法を増幅させています。
実際に動いているハイパースポーツはこちらの動画(*外部英語サイトへ移動します)でご確認いただけます。
この記事は、TechBullionのAngela Scott-Briggsが執筆し(初出日:2021年3月29日)、アマナのパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせは、licensed_content@amana.jpにお願いいたします。