英国・スコットランドはテクノロジー業界の企業が集まる注目のエリアです。スコットランドの各地には意欲的なテクノロジー企業がたくさん見られ、その多くがエジンバラ、グラスゴー、アバディーン、ダンディという4つの都市で創業しています。アバディーンを拠点とするブリュードッグ(BrewDog)(*外部英語サイトへ移動します)はこの地域で最も成功した企業の1社であり、スコットランドで活動する唯一のユニコーン企業(*企業価値が10億米ドル以上のスタートアップ企業)です。また、成長の激しいテック業界に多大な貢献をした企業としては、スカイスキャナー(Skyscanner)も挙げられます。
現在この地域には2,000社以上の意欲的な企業があり、そのうち30%以上を占めるのがテクノロジー企業です。特にAIを用いるテクノロジー企業が数多く存在するほか、デジタルヘルス、フィンテック、Edtech、IoT、デジタルセキュリティなどが、スコットランドにおける成長部門として挙げられます。
本誌UKTNでは、宇宙技術やサイバーセキュリティなど、目下成長中のさまざまな業界で活動している、スコットランドの注目すべきスタートアップをリストアップしました。スコットランドの成長著しいテクノロジー系スタートアップをぜひご覧ください。
ポープリント(Pawprint)
- 創業者:クリスチャン・アーノ(Christian Arno)氏
- 創立年:2019年
- 資本金:42万2,000英国ポンド
写真提供:ポープリント
気候変動に高い関心が寄せられる現在、CO2排出量を追跡する企業であるポープリント(*外部英語サイトへ移動します)は、あらゆる人が自分のカーボンフットプリントを測定、理解、最小化できるようにすることを目標としています。これはまさに、家庭や仕事の場に限らず生活のあらゆる側面で役立つ初のエコ配慮型ツールとなります。パンデミックをきっかけにオンラインツールに対する需要が飛躍的に伸び、同社のビジネスは2020年に成長を遂げました。
2020年11月、エジンバラのエコテクノロジー企業である同社は、株式型クラウドファンディングプラットフォームであるクラウドキューブ(Crowdcube)において、241人の投資家から42.7万英国ポンドを調達しました。クラウドファンディングの目標額である40万ポンドを1週間足らずで超えました。同社は今後、グローバルな影響力を強め自社製品の開発を進めることを目指しています。
スカイローラ(Skyrora)
- 創業者:ウォロジミール・レヴィキン(Volodymyr Levykin)氏
- 創立年:2017年
- 資本金:3,900万英国ポンド
写真提供:スカイローラ
宇宙テクノロジー部門におけるここ数年の革新は目覚ましく、複数の企業が画期的な技術を開発しています。その中の1社がエジンバラを拠点とするスカイローラ(*外部英語サイトへ移動します)です。同社は、小型衛星メーカーの宇宙事業参入を支援するロケットの設計、製造、導入を手がけています。同社は打ち上げ機技術の開発にも取り組んでおり、宇宙テクノロジーでの生産高アップを目指して、2021年3月に欧州宇宙機関(ESA: European Space Agency)から250万英国ポンドを調達しました。
トーキング・メディシンズ(Talking Medicines)
- 創業者:エリザベス・フェアリー(Elizabeth Fairley)氏、ジョー・ハリデー(Jo Halliday)氏、スコット・クラエ(Scott Crae)氏
- 創立年:2013年
- 資本金:200万英国ポンド
写真提供:トーキング・メディシンズ
グラスゴーに本社を置くトーキング・メディシンズ(*外部英語サイトへ移動します)は、製薬業界向けのソーシャルインテリジェンス企業です。さまざまなデータ収集ツールを使用する同社のAIデータプラットフォームは、問診時の患者の発言を製薬現場で利用できるインテリジェンスに変えることで企業をサポートしています。
同社は2020年11月、スコットランド投資銀行(Scottish Investment Bank)も参加して行われたターン(Tern Plc)の資金調達ラウンドにより、110万英国ポンドを調達しました。同社はこの資金を元に新たなAIデータプラットフォームを立ち上げるとともに、データ技術チームでの新規雇用を発表しました。
インテリジェント・グロース・ソリューションズ(Intelligent Growth Solutions)
- 創業者:デイブ・スコット(Dave Scott)氏、ヘンリー・エイクロイド(Henry Aykroyd)氏
- 創立年:2013年
- 資本金:700万英国ポンド
写真提供:インテリジェント・グロース・ソリューションズ
世界人口の急増と経済的な豊かさが高まるにつれて、食料需要が拡大しています。ダンディを拠点とする屋内農業技術を扱うインテリジェント・グロース・ソリューションズ(*外部英語サイトへ移動します)は、都市部での食料生産と収穫量の最大化を実現する垂直農法用タワー開発のスペシャリストです。2018年にスコットランドで初めて垂直農法に着手したことで知られており、農業生産者は空気の流れ、照明、温度などの要素を制御することで、年間を通じて作物を栽培できます。
同社は2019年9月、農業向け投資企業のオスプライAgサイエンス(OAS: Ospraie Ag Science)とアグファンダー(Agfunder)が主導するシリーズA資金調達ラウンドの延長として、160万英国ポンドを確保しました。この資金調達ラウンドは、市場におけるアグリテックのプレゼンスを高めることが目的でした。
トリクル(Trickle)
- 創業者:エイドリアン・ウィルス(Adrian Wills)氏、ポール・レイド(Paul Reid)氏、ロス・デンプスター(Ross Dempster)氏
- 創立年:2018年
- 資本金:120万英国ポンド
写真提供:トリクル
エジンバラを拠点とするトリクル(*外部英語サイトへ移動します)は、組織がより良い職場を構築できるよう支援する企業です。従業員がフィードバックを送ることができる同社のソリューションにより、経営陣や人事部門は、スタッフの声に耳を傾け、スタッフの就業満足度を維持することができます。同社が創業したのは、産業界が前向きな職場文化を育むことの重要性を認識し始めたタイミングでした。2019年、シード資金調達ラウンドで、多くのエンジェル投資家から100万英国ポンドを調達しました。
シアン・フォレンジックス(Cyan Forensics)
- 創業者:ブルース・ラムゼイ(Bruce Ramsay)氏、イアン・スティーブンソン(Ian Stevenson)氏
- 創立年:2016年
- 資本金:910万英国ポンド
写真提供:シアン・フォレンジックス
ネットでのいじめ、誤った情報の拡散などのサイバー犯罪による影響は深刻です。この問題に取り組むために創業したのが、ネピア大学のスピンアウトとして設立されたシアン・フォレンジックス(*外部英語サイトへ移動します)です。法執行機関やソーシャルメディア企業は、同社が開発した新たなテクノロジーにより、有害なオンラインコンテンツを見つけてブロックすることが可能になりました。
エジンバラを拠点とする技術系スタートアップ企業である同社は2021年3月、パー・エクイティ(Par Equity)を中心に、既存の投資企業であるマーシア(Mercia)、トリプル・ポイント(Triple Point)、SISベンチャーズ(SIS Ventures)、スコットランド開発公社(Scottish Enterprise)、マクラウド・ファミリー・トラスト(MacLeod Family Trust)が参加して行われた資金調達ラウンドで580万ユーロ(約500万英国ポンド)を獲得しました。この投資により、同社の意欲的な国際成長計画が今後2年間で加速することになるでしょう。
フレーバリー(Flavourly)
- 創業者:ライアン・オローク(Ryan O'Rorke)氏
- 創立年:2012年
- 資本金:72万英国ポンド
写真提供:フレーバリー
2021年、『ドラゴンズ・デン』(*ビジネスで成功を収めた経営者たちの前で自分のビジネスプランをプレゼンし、資金を獲得するという英国のテレビ番組)の出演をきっかけに注目を集めるフレーバリー(*外部英語サイトへ移動します)は、グルメ食品とビールを扱うエジンバラのスタートアップ企業です。チリポップコーンやベーコンジャムといった珍しい食品を専門に扱っており、サプライヤーから同社の会員に向けて食品とビールの詰め合わせを毎月提供しています。
同社は今年、クラウドキューブで51.5万英国ポンドを調達しました。当初の目標額は30万英国ポンドでしたが、339人の投資家から関心を集め、目標額を65%上回る調達に成功しました。
ケルティック・リニューワブルズ(Celtic Renewables)
- 創業者:マーティン・タングニー(Martin Tangney)氏
- 創立年:2012年
- 資本金:1,500万英国ポンド
写真提供:ケルティック・リニューワブルズ
エジンバラに本拠を置くバイオテクノロジー企業のケルティック・リニューワブルズ(*外部英語サイトへ移動します)は、スコッチウイスキーの発酵過程で発生する副産物からバイオ燃料の製造に成功した初の企業です。同社はその技術をもとに製造規模を拡大し、ベルギーでは自動車の燃料として使われています。ベルギーのゲントにあるバイオ・ベース・ヨーロッパ・パイロット・プラント(BBEPP: Bio Base Europe Pilot Plant)では、同社のバイオブタノール技術の検証が行われています。
クリーンテックのイノベーターである同社は2020年10月、2,500万英国ポンドの投資を呼びかけるクラウドキューブによる資金調達キャンペーンを発表しました。このキャンペーンは、スコットランドにおける同規模の中小企業が手がける資金調達としては最大級のものになります。開始当初の最低目標額は175万英国ポンドでしたが、24時間以内にその額の調達に成功しました。
フロッグ・システムズ(Frog Systems)
- 創業者:フィル・ウォームズ(Phil Worms)氏
- 創立年:2014年
- 資本金:60万英国ポンド
写真提供:フロッグ・システムズ
パンデミックの中、テック・フォー・グッド(Tech for good *最先端のテクノロジーを活用して社会をより良くする取り組みを推進すること)の各企業は好調な業績を収めました。この傾向は2021年の今も変わらず続いています。この分野で成長した企業のひとつに、グラスゴーを拠点とするフロッグ・システムズ(*外部英語サイトへ移動します)があります。メンタルヘルスとウェルビーイングを扱う同社は、生活の支援を必要としている人たちに向けて、動画やデジタルを活用しながら、道しるべとなる希望のメッセージを伝えています。
同社は2021年2月、優良投資企業家からの大規模な資金調達もあり、50万英国ポンドの資金を獲得しました。この投資には、オルドリッジ財団(Aldridge Foundation)の会長であり、キャピタグループ(Capita Group)の創設者兼元会長であるサー・ロッド・オルドリッジ(Sir Rod Aldridge)をはじめ、既存の投資家および4人の新規投資家が参加しています。同社はこの資金を使って新たにスタッフを雇用し、今後12カ月間で事業拡大を予定しています。
ビルド・ア・ロケット・ボーイ(Build A Rocket Boy)
- 創業者:レスリー・ベンジーズ(Leslie Benzies)氏
- 創立年:2016年
- 資本金:N/A
写真提供:ビルド・ア・ロケット・ボーイ
エジンバラを拠点とするビルド・ア・ロケット・ボーイ(*外部英語サイトへ移動します)は、エブリウェア(EVERYWHERE)という新しいオンラインゲームを制作しているビデオゲーム開発企業です。同社は2020年11月、ギャラクシー・インタラクティブ(Galaxy Interactive)や、既存の投資企業であるネットイーズ・キャピタル(NetEase Capital)、eWTPイノベーション・ファンド(eWTP Innovation Fund)、クリエイティブ・アーティスツ・エージェンシー(Creative Artists Agency)から、3,270万英国ポンドの株式投資を獲得しました。
この記事は、UKTNが執筆し(初出日:2021年9月13日)、アマナのパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせは、licensed_content@amana.jpにお願いいたします。