気候テックにおいて世界をリードしている英国。実のところ、英国の気候テック企業の数は、2021年で60%以上も増加しています。2020年の323社に対し、現在519社の英国企業がこの分野で活動しており、欧州の気候テックを牽引していると報道されています。
気候テック分野が成長していることを受けて、革新的なテック企業や起業家の成長を支援する英国のプラットフォーム「テックネイション(*外部英語サイトへ移動します)」は、第2次ネットゼロ成長プログラム(Net Zero Growth Programme)を立ち上げました。英国の有望な気候テック企業の支援を主な目的としたこのプログラムには、英国全土から32社の気候テックスタートアップが参加しています。第2次ネットゼロの参加企業は、業種を超えた気候変動対策に対する英国のアプローチに革命をもたらしています。ここからは、目標に向かって前進している英国の主な気候テックスタートアップをご紹介しましょう。
マグウェイ(Magway)
- 創業者:フィル・デイビス(Phill Davies)氏、ルパート・クルーズ(Rupert Cruise)氏
- 設立年:2017年
- 資金:不明
写真提供:マグウェイ
ロンドンを拠点とするマグウェイは、サステナブルサプライチェーンおよび物流テックスタートアップです。オール電化、低フットプリント、ゼロエミッションの大量配送システムにより、運搬車両の数を90%削減し、渋滞、汚染、オンラインショッピングのカーボンフットプリントを削減できます。
2020年2月、マグウェイは英国の物流市場に革命を起こす計画の次の段階に必要な資金を確保するため、クラウドキューブ(Crowdcube)で民間投資を募り、150万英国ポンド以上を調達しました。
オックスウォッシュ(Oxwash)
- 創業者:カイル・グラント(Kyle Grant)氏、トーマス・デ・ウィルトン(Thomas de Wilton)氏
- 設立年:2018年
- 資金:570万英国ポンド
写真提供:オックスウォッシュ
オックスフォードを拠点とするランドリースタートアップのオックスウォッシュ。同社は、洗濯業界に革命をもたらすアプリを使用した個人および法人向けのオンデマンド洗濯サービス業者です。利用者は、プラットフォーム上でサービスの予約や、引き取り/配達スケジュール設定が可能。次世代のクリーニングプラットフォームと物流プラットフォームを統合することで、拡大の一途をたどるオンデマンドホスピタリティやケータリング業界のニーズに対応しています。
2021年6月、オックスウォッシュはシード資金調達ラウンドで、レキットベンキーザー(RB: Reckitt Benckiser)の新しいベンチャー部門であるRBベンチャーズ(RB Ventures)、トゥルーサイトベンチャーズ(TrueSight Ventures)、ビズ・ストーン(Biz Stone *ツイッター共同創業者)氏、ポール・フォスター(Paul Forster *インディード創業者)氏、ファウンダーズファクトリー(Founders Factory)、オックスフォードテクノロジーマネジメント(Oxford Technology Management)、および多数のエンジェル投資家から175万英国ポンドを調達しました。調達した資金は、自社開発のテクノロジープラットフォームへの投資と、北米や欧州事業の拡大に活用する予定です。
クオリスフロー(Qualis Flow)
- 創業者:ブリタニー・ハリス(Brittany Harris)氏、ジェイド・コーエン(Jade Cohen)氏
- 設立年:2018年
- 資金:250万英国ポンド
写真提供:クオリスフロー
人工知能(AI)ベースのプラットフォームを利用して建設環境リスクを測定する建設テック企業であるクオリスフロー(*外部英語サイトへ移動します)は、請負業者や大型プロジェクトの社会的・環境的影響の管理をサポートしています。機械学習ベースのツールであるQflowは、建設現場における資材と廃棄物の追跡を自動化し、エンジニアリングチームにリアルタイムでアラートを送ることで品質や持続可能性を管理できるようにし、投資家や開発業者に透明性を提供します。
2021年8月、同社はグリーン・エンジェル・シンジケート(Green Angel Syndicate)から240万米ドルの投資を獲得しました。調達した資金は事業拡大と、よりサステナブルな未来の構築に活用する予定です。
リップル(Ripple)
- 創業者:サラ・メリック(Sarah Merrick)氏
- 設立年:2017年
- 資金:145万英国ポンド
写真提供:リップル
ロンドンを拠点とするエネルギーテックのスタートアップであるリップル(*外部英語サイトへ移動します)は、個人や企業が大規模な風力発電所を共同所有し、そこで発電された低コストのグリーン電力を電力会社パートナーの送電網を通じて各オーナーに供給しています。これは、風力発電所の共同所有と電力供給を簡素化し、身近なものにする英国初のクリーンエネルギーのオーナーシップ・プラットフォームです。同社は、クリーンエネルギーのオーナーシップを誰でも手頃な料金で利用できるようにすることを使命に活動しています。
2020年12月、リップルはシーダーズ(Seedrs)の最新のエクイティ・クラウドファンディング・キャンペーンを通じて、780人を超える投資家から約37万5,000英国ポンドの資金を調達。その資金は、再生可能エネルギーにおけるプラットフォームのさらなる成長と開発に活用するとのことです。
サテライトビュー(Satellite Vu)
- 創業者:アンソニー・ベイカー(Anthony Baker)氏、サイモン・タッカー(Simon Tucker)氏、トビアス・ライニック(Tobias Reinicke)氏
- 設立年:2016年
- 資金:380万英国ポンド
写真提供:サテライトビュー
ロンドンを拠点とするサテライトビューは、赤外線放射に焦点を当てながら、衛星テクノロジーを利用した地球規模の課題に取り組んでいます。同社は、地球上の構造物の温度をほぼリアルタイムで監視することにより、経済活動、エネルギー効率、カーボンフットプリントに関する貴重な知見を得ることを目指しています。その高解像度の赤外線データセットは、ビジネス上の意思決定の改善やネットゼロの早期実現を可能にすると期待されています。
同社は、セラフィムキャピタル(Seraphim Capital)と欧州最大のプロップテック(不動産テック)のベンチャー投資会社であるA/Oプロップテック(A/O PropTech)が主幹事を務めた2021年4月のシード資金調達ラウンドで、360万英国ポンドの資金を調達しました。このラウンドには、リッジラインベンチャーズ(Ridgeline Ventures)、アースサイエンスファウンデーション(The Earth Science Foundation)、E2MCベンチャーズ(E2MC Ventures)、ステラーソリューションズ(Stellar Solutions)などの専門投資家が参加しました。調達した資金は、地球上のあらゆる建造物のサーマルフットプリントを1~2時間おきに画像化することができる世界初の衛星配置の打ち上げに活用される予定です。また、この資金により2022年に打ち上げを予定している同社初の人工衛星の製造に着手することも可能になります。
ソースフル(Sourceful)
- 創業者:ウィン・チャン(Wing Chan)氏、シラン・ツェン(Shiran Zheng)氏、メアリー・ワン(Mary Wang)氏
- 設立年:2020年
- 資金:不明
写真提供:ソースフル
マンチェスター郊外を拠点とするソースフルは、サステナビリティに重点を置いたエンドツーエンドの調達/サプライチェーンプラットフォームです。このプラットフォームを利用する企業は、検証済みサプライヤーのネットワークからサステナブルな包装資材の調達、構成、設計を行えるほか、在庫補充の自動化もできます。自社開発したライフサイクル評価ツールにより、企業は製品決定の影響をリアルタイムで把握し、カーボンフットプリントを相殺してネットゼロを達成できるようになります。
つい最近、ソースフルは1,220万米ドル(約880万英国ポンド)の資金調達を発表しました。そのラウンドはインデックスベンチャーズ(Index Ventures)が主幹事を務め、エカベンチャーズ(Eka Ventures)、ベンレックス(Venrex)、フィグマ(Figma)創業者のディラン・フィールド(Dylan Field)氏が参加しました。その結果、インデックスベンチャーズのパートナーであるダニー・リマー(Danny Rimer)氏が役員に加わりました。ソースフルは、調達した資金を活用して現在の事業モデルの規模を拡大し、持続可能な調達のためのテックプラットフォームを構築する予定です。また、サステナビリティ、テクノロジー、マーケティング、およびオペレーション分野の人材確保にも投資し、2021年末までにチームの規模を60人に拡大することを目指しています。
サンスワップ(Sunswap)
- 創業者:マイケル・ロウ(Michael Lowe)氏、ニコライ・タウバー(Nikolai Tauber)氏、アンドリュー・スーキス(Andrew Sucis)氏
- 設立年:2020年
- 資金:不明
写真提供:サンスワップ
ロンドンを拠点とするサステナブル物流テックのエンジニアリング企業であるサンスワップ(*外部英語サイトへ移動します)は、輸送冷凍の脱炭素化を加速させるハードウエアとソフトウエアを開発しています。同社が開発したバッテリーと太陽電池を搭載した輸送用冷凍ユニット(TRU: Transport Refrigeration Unit)は、スーパーマーケットやその他の冷凍輸送事業者が現在使用している、規制が緩く、大気汚染物質を排出するディーゼル冷凍ユニットに取って代わろうとしています。
2021年、すでにサンスワップはクラウドキューブのクラウドファンディング・ラウンドで50万英国ポンドを調達しました。同社は、調達した資金を活用して迅速な事業拡大を図るとともに、2021年末までにゼロエミッションTRUテクノロジーを路上に展開する予定です。
シルベラ(Sylvera)
- 創業者:アリスター・フューレイ(Allister Furey)氏、サミュエル・ギル(Samuel Gill)氏
- 設立年:2020年
- 資金:600万英国ポンド
写真提供:シルベラ
ロンドンを拠点とする世界初のカーボンオフセット格付会社であるシルベラは、地理空間データ、機械学習、および独自の気象データを利用して、実施中のカーボンオフセットプロジェクトについて信頼性と透明性の高い評価を行う企業です。
2021年5月、シルベラは780万米ドル(約550万英国ポンド)の資金を調達したことを発表しました。主幹事はインデックスベンチャーズで、シードキャンプ(Seedcamp)、スピードインベスト(Speedinvest)、リベント(Revent)など既存の機関投資家が参加しました。さらに、ニューヨーク証券取引所(NYSE)の現CEOと元CEOや、トムソン・ロイター(Thomson Reuters)、シティバンク(Citibank)、IHSマークイット(IHS Markit)などの著名エンジェル投資家もラウンドに参加しました。調達した資金は、テクノロジープラットフォームのさらなる拡張に活用する予定です。
トレッド(Tred)
- 創業者:ウィル・スミス(Will Smith)氏、ピーター・カービー(Peter Kirby)氏
- 設立年:2019年
- 資金:不明
写真提供:トレッド
リーズを拠点とするフィンテックのスタートアップであるトレッドは、お金を人類と地球のために役立てることを使命とするコンシューマー向けフィンテック企業です。同社初の商品は英国初のグリーンデビットカードで、ユーザー自身の消費活動によるカーボンフットプリントの追跡・削減・オフセットが行えるほか、得られた利益で植林活動を行うことができます。
トレッドは、数カ月前にクラウドキューブで一般向けのクラウドファンディング・キャンペーンを発表し、すでに50万英国ポンドを確保しています。現在は、EIS投資ラウンドで最大100万英国ポンドを調達しながら株主基盤の拡大を目指しています。調達した資金は、顧客が自身のカーボンフットプリントの追跡や削減を行えるようにするグリーンバンキング・ソリューションの拡充に活用する予定です。
ザンプラ(Xampla)
- 創業者:サイモン・ホンバースレイ(Simon Hombersley)氏
- 設立年:2018年
- 資金:870万英国ポンド
写真提供:ザンプラ
ザンプラは、プラスチックに代わる天然素材を製造するケンブリッジ大学のスピンアウト企業で、商業用植物性タンパク質材料における世界的リーダーです。同社の次世代材料は、合成高分子のように機能しながら完全に自然分解されるため、環境を破壊することがありません。同社の使命は、小袋や包装フィルムなど、世の中にあふれる使い捨てプラスチック製品や、液体やローションに含まれているマイクロプラスチックを置き換えることです。
ザンプラは2021年1月、李嘉誠(Li Ka Shing)氏の民間投資部門であるホライズンベンチャーズ(Horizon Ventures)が主幹事を務め、アマデウスキャピタルパートナーズ(Amadeus Capital Partners)が参加したシード資金調達ラウンドで、620万英国ポンドのシード資金を調達しました。同社は調達した資金を活用して、プラスチックに代わる天然植物性タンパク質の展開を加速させる予定です。
この記事は、UKTNが執筆し(初出日:2021年9月20日)、アマナのパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせは、licensed_content@amana.jpにお願いいたします。