第1回 クラウドファンディングとは?
第1回 クラウドファンディングとは?

クラウドファンディングが注目されている背景には、どのようなことがあるのでしょうか。クラウドファンディング実施の目的と活用によって広がる可能性について、クラウドファンディング総合研究所 所長の板越ジョージ氏に伺いました。

板越ジョージ氏
メリット クラウドファンディングの真の目的は資金集めではない

クラウドファンディングとは、企業や団体、個人がインターネットを通して商品やサービスなどの企画をプレゼンテーションし、不特定多数の群衆(crowd)から資金を集める(funding)仕組みのことです。支援者が集まるかどうかは、プロジェクトが魅力的かどうかで決まります。規模や実績、担保や保証金の有無に関わらずだれでも実施できるため、新たな資金調達の方法として注目されています。

Crowd + Funding = Crowdfunding

“ファンディング”というと投資やリスクの懸念を想起されがちですが、そうではありません。現在、世界的に急成長しているのは、プロジェクトが成立したらお金を出す代わりに何らかの返礼品やサービス、利権を受け取れる「購入型」。支援者は、プロジェクトが成立しなければお金を出す必要すらないのです。
実施者は技術やアイデアがあればプロジェクトを立ち上げることができます。独創的なものづくりが得意な日本では、中小メーカーなどが商品化前のアイデアを出品してテストマーケティングを行い、画期的なプロダクトを生み出す例も増えてきました。見たことのないサービスやユニークなイベントなど、商業ベースでは扱いにくいものでも、支援者が集まれば実現が可能です。クラウドファンディングを実施するメリットは、もはや資金集めではなく、「マーケティング」活用にあると言えます。

実例 集めた資金を大きく超えるプロジェクトにもなり得る

映画『この世界の片隅に』は、クラウドファンディングのマーケティング活用が成功した事例のひとつ。実はプロジェクト開始時は、映画自体ではなくパイロット版を作るための制作費を募っていました。ところが、あっという間に支援者が集まり、一足飛びに「映画化してほしい」という支援者が現れたのです。つまりクラウドファンディングで「“この映画が観たい”人を何千人も集め、ファンとして囲い込む」というマーケティングができていたからこそ、映画化につながったのです。
ハリウッドではこの手法が当然のように用いられており、多くの映画監督がクラウドファンディングを利用しています。クラウドファンディングだけでハリウッド映画級の制作予算を集めるのは難しいですが、一定数のファンを集めることで、映画を作る前からプロデューサーに実績を示すことができ、同時に見込み顧客を集めることも可能です。

可能性 自社だけでは難しいコラボレーションや販路拡大のチャンスも

「購入型」のクラウドファンディングは「まだ世の中にない商品やサービスを予約して買う」ものです。そのため、多くの場合、プロジェクトの公開段階では商品(サービス)が完成していません。クラウドファンディングを通して集まるユーザーの声を開発に取り入れることもできますし、運がよければプロジェクトページを見た企業や団体、個人の方からコラボレーションの申し出を受けるといった機会に恵まれることもあるのです。
今や大手企業も、投資先や買収先の開拓のためにクラウドファンディングに注目するようになってきています。
特に、開始早々に目標金額の大半を集めてしまうようなプロジェクトは話題になりやすく、企業の注目度も高いです。大手企業とコラボレーションできれば社会的信用が高まり、ブランディングにもつながります。また、大手百貨店などの流通から声がかかり、販路開拓に成功した例も出てきています。自分たちだけではつかめないような好機を手にすることもありますから、中小企業や個人事業主の方々にこそクラウドファンディングに力を入れられることをおすすめしたいと思っています。