第1回 クラウドファンディングとは?
第2回 金融視点で考えるクラウドファンディングの活かし方

クラウドファンディングと一口に言っても、方法は一つではありません。資金の動き方やリターンの方法によって5種類に分類されます。それぞれの仕組みとクラウドファンディングの活かし方について、日本政策金融公庫総合研究所 主席研究員の竹内英二氏に伺いました。

竹内英二氏
魅力 クラウドファンディングが企業と投資家を近づけた

従来、中小企業の資金調達は「金融機関で借り入れる」「仕入れ先から買掛金の形で借り入れる」といった「借り入れ」がほとんどでした。金融機関から借り入れる場合は、過去の実績や財務状況を見て融資の判断をするのが基本です。一方クラウドファンディングは、プロジェクト自体の魅力や可能性を審査するため、実績や財務状況に関係なく資金調達が可能です。例えば累積赤字を多く抱えている企業の場合、金融機関の評価は厳しいけれど、成功の可能性が高いプロジェクトを実施できれば、クラウドファンディングでは出資してもらえる。このように、金融機関に頼らなくても資金を調達できるということが、クラウドファンディングの魅力のひとつです。
また、クラウドファンディングは株式投資のようにも活用されています。「将来性のある株に投資したい」人がいる一方で、株式会社であっても未公開であれば株式を公募したり、社債を発行したりするのは難しい。そこにクラウドファンディングが登場したことで、未上場企業と投資家のマッチングが可能になったのです。

種類 「お金の動き方」で見るクラウドファンディングの5類型

クラウドファンディングは、支援者(投資家)のお金をどのように扱うかで5種類に分けられます。まずはそれぞれについて見ていきましょう。

[購入型]

これから作る商品・サービスに対して資金を支援する、クラウドファンディングでは最も主流な形式です。リターンは商品・サービス自体であることが多く、ECサイトで予約購入するイメージに近いです。会計上でも、支援者が出したお金は借入金ではなく「前受金」として扱われます。

 

 

 

[投資型]

運営会社がファンドを作り、そのファンドに出資する形式です。実際は貸付に近いイメージで、支援者にとっては「投資」、企業にとっては「借り入れ」となります。元本保証ではなく「プロジェクトによる売上の中からあらかじめ決めた分をリターンする(さらに商品などのおまけがつくことも)」といったシステムが一般的です。

[融資型]

ソーシャルレンディングと呼ばれることが多い形式です。支援者が貸し付け、資金を借りた企業は元金と利息を合わせて返さなければなりません。リターンは金利ということになります。利息は半年で5~7%程度と、銀行から借り入れるより高めです。そのためか「マンションを作るので、竣工して分譲が始まるまでのつなぎ資金を調達したい」など、見込みのつきやすい不動産関連の案件が多い傾向があります。
貸金業の規制のため、支援者が企業に直接融資するのではなく、運営会社を仲介する形式をとっています。複数のプロジェクトをまとめて(プールして)融資対象にする仕組みをとっているため、支援者のリスクは低減します。また、債権のプールに対して支援するため、実施者である企業は企業名を明示する必要がありません。

[寄付型]

お金やもの・サービスなど、経済的なリターンを用意しない形式。街頭で見かける募金活動がオンライン上で行われているイメージに近いです。

 

 

 

[株式型]

こちらは実際に未公開株の売買をする形式です。つまり、資金を求めている企業の株主を増やすことができます。リターンも基本的に株と同じで、利益が上がれば配当します。企業は資金を返さなくてもいいという点でメリットがあり、支援者も見込みのある未公開株を見つけられる可能性があります。もし上場するほど大きくなれば、かなり大きなリターンが見込めますが、一方で企業自体が立ち行かなくなれば紙切れになってしまう可能性もあります。

選び方 「気軽にテストマーケティング」なら購入型、「コアなファン獲得」なら投資型

資金調達をするまでの期間やコストを考えれば、金融機関から借り入れる方がずっと楽です。それでも今、手間をかけてクラウドファンディングを利用する企業が増えているのは、顧客獲得につながるからなのです。
「購入型」のクラウドファンディングでは、運営会社ではなく、支援者がプロジェクトの善し悪しを判断します。そのため、運営会社の審査のハードルは高くはありません。クラウドファンディングを通じて試作品の反応を見るなど、テストマーケティングの場として利用するのには適していると思います。また、運営会社も国内で100を超えており、成功事例もたくさん出ているため、それらを参考にチャレンジしやすいでしょう。
「投資型」は必ず金銭でリターンする必要があるため、運営会社の審査にも1、2ヶ月を要しますが、その分顧客獲得のメリットも大きくなります。リターンを送付した段階で終了する購入型と違って、投資型は会計期間(リターンが発生する期間)の1年~数年間、支援者と付き合い続けることになるため、コアなファンを獲得しやすいのです。例えば、支援者が「自分が出資している商品・店・サービス」としてSNSなどで紹介してくれたり、実店舗の場合は家族や知人を連れてきてくれたりする強いコミットが期待できるのです。

 

このように、クラウドファンディングはただ単に資金を集めるための手法ではなく、集めた資金を利用してマーケティングに活用することで成果をあげられる施策だと言えます。
また、インターネットを使って支援者を募るという特性上、SNSが好きな方や、マメな方が成功しやすいように思います。「購入型」のプロジェクトを見ても、途中で中だるみしてそのまま尻すぼみするケースもあれば、途中から盛り返すケースもあります。プロジェクトを掲載したらそれで終わりではなく、目標達成までこまめに情報を更新したり、SNSでシェアし続けることが重要です。
実際にクラウドファンディングを活用しているのは、小規模な企業が多いです。ユニークなアイデアを持っていれば、企業規模の大小はあまり関係ありません。是非一度、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。