第1回 クラウドファンディングとは?
第3回 アメリカに学ぶ、クラウドファンディング活用方法

クラウドファンディングが隆盛しているアメリカでは、どのようにクラウドファンディングが活用されているのでしょうか。普及の背景や活用方法について、クラウドファンディング総合研究所 所長の板越ジョージ氏に伺いました。

板越ジョージ氏
動向 クラウドファンディング普及の背景

アメリカでクラウドファンディングが注目されるようになったのは2008年頃。当時はリーマン・ショックで上場企業が減り、投資家からの資金調達も難しく、新たな資金調達の手法としてクラウドファンディングが広まっていきました。大手運営会社の一つindiegogoは同年に、もう一つのkickstarterは翌年にローンチしています。
一方、日本にクラウドファンディングが広がったのは2011年の東日本大震災の頃。最初期は復興支援を目的とした使われ方が多かったことから、「クラウドファンディング=寄付」と誤解している人も多く、またリスクを嫌って敬遠する人も多かったように思います。
クラウドファンディングが日本に普及していく様子は、20数年前、インターネットが普及するまでの状況とよく似ています。今やインターネットは生活に欠かせないものですが、アメリカでは日に日に市場が大きくなるのに対して、日本ではしばらく「インターネットって何?」という状態が続きました。
アメリカで普及した新しいものは、いずれ日本でも普及する傾向があります。つまり、アメリカで成功しているクラウドファンディングの活用法を真似てみることは、日本で成功するために有効な手段だと考えられます。いわゆる“タイムマシン経営”です。現在、世界的に主流となっているのは、資金を支援してもらう代わりに物品やサービスなどを提供する「購入型」。日本でも2016年に本格的に普及し、消費者にとっては新しいショッピングの場となり始めています。

図:国内クラウドファンディングの新規プロジェクト支援額(市場規模)推移
考え方 マーケティング手法を取り入れてクラウドファンディングを成功へ導く

私自身、1995年にニューヨークで起業し、日本とアメリカで自営業を続ける中で実感していますが、日本は「営業的発想」、アメリカは「マーケティング」の考え方が主流となっています。
日本では「まず1回使ってみてください」と売り込み、「使えば、お客様は必ず良さをわかってくれる」と考えがちではないでしょうか。一方アメリカでは「自分で選んで買いたい」消費者が多く、売る側も何が必要とされているかを徹底的に分析、研究し、売れるものだけを商品化します。「1回使ってみて……」と売り込んでも、「なぜ使わないと分からないんだ?あらかじめ説明できないとダメだ」となってしまうのです。クラウドファンディングを活用して売り込む場合、アメリカの考え方を取り入れる必要があります。クラウドファンディングの成功には、マーケティングの考え方は必須なのです。

第1回のコラムでもお伝えしたように、クラウドファンディングの最大のメリットは、資金調達ではなくマーケティング活用です。よって、「社運をかけて1回だけ勝負する」のではなく、製品やサービスをより良いものにブラッシュアップしていくための「マーケティングツールとして繰り返し使い続ける」ことが重要です。

伝え方 「ストーリー」と「共感」がモノへのニーズを呼び覚ます

「マーケティング」の考え方のおさらいです。マーケティングの基本は、“売る”のではなく消費者に“買いたい”と思わせることです。社会が成熟した今、必要とされているのは既にあるモノではなく、問題を解決する新しいモノ。そのため、クラウドファンディングを成功させるポイントは「ストーリー」、「共感」、「魅力的でお得感のあるリターン」に集約されます。どんな人が作っているか、どんな技術があるかというストーリーを魅力的に見せると、共感を呼んで「この人の作っているものなら欲しい」と思ってもらえる。例えば、世界的ITメーカーやスポーツメーカーのCM広告は、「買ってください」とは言わずに、ひたすら商品の魅力を伝えますよね。それで皆「欲しいな」と思うし、使ってみてもまた「やっぱりいいな」と気に入ってもらえます。

クラウドファンディング運営会社のプロジェクトページには、概要テキストや写真、動画を掲載することができます。概要情報をどれだけ魅力的に見せることができるかが、クラウドファンディングの成功のカギです。特に動画は効果が高いというデータがあるそうです。プロジェクトページで商品やサービスの魅力をしっかり伝え、支援者に「欲しい」「使いたい」と思ってもらえるように、動画制作や実施概要の原稿調整に時間と労力をしっかりとかけてみてください。