American ExpressAmerican ExpressAmerican ExpressAmerican ExpressAmerican Express

プロフェッショナルの新・視線/第3回

 

「感性」がビジネスをドライブする、

ニコライ・バーグマン流経営術(前編)

 

ニコライ・バーグマン

 

デンマーク出身のフラワーアーティスト。北欧のテイストと細部にこだわる日本の感性を融合させた独自のスタイルをコンセプトとし、自身で考案した「フラワーボックス」は、フラワーギフトの定番として人気を博している。現在、国内外に14店舗のフラワーブティック、国内に2つのカフェを展開。フラワーボックスの誕生20周年を記念する展覧会「The Flower BOX Exhibition」を、2020年6月から11月にかけて太宰府天満宮(福岡)・清水寺(京都)・六本木の計3カ所で開催予定。自身の人生哲学をまとめたビジネス書『いい我慢~日本で見つけた夢を叶える努力の言葉~』(あさ出版)が好評発売中。

 

 

■ 「エンドレス・ポテンシャル」を求めて来日

■ 「アフォーダブル・ミステイク」は成長の糧

■  世界での経験を日本にフィードバックする

19歳でデンマークより単身来日し、日本でその才能を開花させたフラワーアーティストのニコライ・バーグマン氏。フラワーデザインの世界において新たな次元を切り開き、ファッション界、デザイン界にまで活躍の場を広げています。さらに、日本を拠点にソウル、ロサンゼルス、デンマーク、シンガポールと、ワールドワイドに事業を展開中。そんなニコライ・バーグマン氏の「経営者」そして「アーティスト」としての素顔に迫りました。

 

「エンドレス・ポテンシャル」を求めて来日

――まずは、「ニコライ バーグマン フラワーズ & デザイン」の事業について教えてください。

 

東京・南青山のショップをフラッグシップとして、国内外の14ヶ所でフラワーブティックを経営しています。旗艦店以外のショップについては、セレクトショップの「エストネーション」、伊勢丹、フォーシーズンズホテルの各社と提携する形で展開中です。また、「Nicolai Bergmann」の世界観を体験していただく場として、「Nomu(ノム)」と名付けたカフェをプロデュースするほか、フラワースクールも開講しています。ブランドのシグネチャーアイテムである「フラワーボックス」は、私が自分のブランドを立ち上げる以前、南青山のフラワーショップを任されていた時に考案した商品ですが、うれしいことに多くの方に愛していただき、今年で20周年を迎えました。それを記念する展覧会「The Flower BOX Exhibition」を全国3ヶ所で開催する予定です。

 

――そもそも、日本という市場のどこに魅力を感じてビジネスを始めたのですか。

 

私の母国デンマークは、「世界一幸せな国」に選ばれたこともあるくらい、国民が生活を楽しむことに長けたすばらしい国です。家具をはじめ、優れたデザインのものを生み出す文化があり、ものを大切にする文化も根付いています。しかし、市場のスケールは到底、日本に及びません。1996年に卒業旅行で初来日したとき、とにかく東京の“大きさ”に衝撃を受けたのです。40階建てや50階建てのビルなんてそれまで見たこともなかったし、街を行き交う人の数もものすごい。そこに、ワクワクするようなエナジーと、「エンドレス・ポテンシャル(endless potential)」、つまり無限の可能性を感じたのです。

 

実際に東京のフラワーショップで働くようになると、デンマーク時代とは仕事のスケールも全く違うと感じました。世界的なファッションブランドのショーやウィンドウに花を入れるなんて、当時のデンマークでは考えられないこと。コペンハーゲンでさえ、ブランドショップはほとんどありませんでしたし、高級ブランドは「旅行先で買うもの」でした。それだけに、東京での仕事は20代の私にとっては、またとないチャレンジでした。

 

最初からずっと日本で活動しようと決めていたわけではありません。「前の年よりも楽しく、エキサイティングな挑戦ができればそれでよし。それができなくなったら、別のステージへ移ってみよう」というのが私の考え方。幸い、日本での活動は停滞するどころか毎年ワクワクできることが増えている状態なので、今に至るというわけです。

 

多彩なアレンジメントが並ぶ「ニコライ バーグマン フラワーズ & デザイン フラッグシップ ストア」(東京・南青山)。併設された「Nomu」ではフレッシュジュースやスムージー、サンドイッチなどを楽しむこともできる。

「アフォーダブル・ミステイク」は成長の糧

――フラワーデザインを軸に置きつつ、インテリアやジュエリーなどの分野にも積極的に挑戦していますね。

 

いろいろなオファーをいただくのですが、断れないんですよ。とにかく「なんでもやってみたい」性格なのです。新規事業は「お金が回ればよい」という考えでやっています。スタッフの給料と必要経費が払えれば、それほど儲からなくても、いつか大きく化ける可能性があります。仮に手を引くことになったとしても、その経験は別のところで生きるはずです。極端な話、会社が潰れるほどでなければ、どんな失敗も「アフォーダブル・ミステイク(affordable mistakes)」。つまり、学びや成長につながる「ちょうどいい失敗」なのです。かつて故郷デンマークに店を出し、3年で撤退したことがありましたが、その際も現地の人々の趣向や店舗運営のノウハウについて大きな学びが得られました。非常に良い機会だったと思います。

 

――2001年に自身の名前を冠したブランドを設立して以来、順調にビジネスを拡大されていますが、もともとどのようなブランド戦略を描いていたのですか。

 

ブランド戦略など全く考えませんでした。目の前の好きなこと、やってみたいことに全力で取り組んでいたら、今のような形になっていたというのが本音です。クリエイターとして、3年先、5年先のことまでは考えたくはないんです。いろんな可能性を残しておきたいですからね。

 

新規事業に挑戦するときもフィーリングを大切にしています。「Go with your gut(直感を信じる)」が私のモットーです。例えば、「サマーバードオーガニック」というデンマーク発のチョコレートの日本での販売を私が手がけることになったのも、サマーバードの創業者ミカエル・グロンルッケさんと、ランチをご一緒して意気投合したのがきっかけです。100%オーガニックのチョコレートにとことんこだわるミカエルさんのパッションに、心を打たれたのです。事業を始めて今年でもう4年目になります。

 

「来年は何店舗増やそう」といった成長戦略はありません。あるのは、「前の年を上回るチャレンジをすること」、ただそれだけです。売り上げが増えて会社が安定してきたら、そのつど新しい部門を設けるといった具合に、余裕があるときに次へとつながるアクションを取ることで、少しずつ会社を大きくしてきたのです。

世界での経験を日本にフィードバックする

 

――海外にも出店されていますが、グローバルに事業を展開するようになって、日本と海外の商慣習の違いなどで苦労したことはありますか。

 

アメリカでまさに今、進行中なのですが、営業許可を得るためのルールがとんでもなく複雑で苦労しています。昨年オープンしたロサンゼルスのショップは、南青山のショップと同じように「店舗+カフェ」というコンセプトでやろうとしているのですが、1年経つのにカフェの方はいまだにオープンできていません。飲食店は特にルールがややこしく、最終チェックの段階になって、突然「トイレをもう1ヶ所作るように」などと言われるのです。きちんとしたチェックリストがあるわけでもなく、担当者によって言うことも違う…。結果、予算も当初想定していた3、4倍はかかっています。

 

――それでも、アメリカに出店することには意味がありますか。

ニコライ・バーグマン氏

あります。日本と違う市場、エリアに展開することに面白さを感じていますし、「Nicolai Bergmann」のブランドバリューも上がると考えています。ロサンゼルスにあるアメリカのフラッグシップストアは、ビバリーヒルズのど真ん中にあり、周りにはお城のような大豪邸が立ち並んでいます。南青山のショップの4倍もの広さがあり、そこで売れる商品は、巨大な鉢に多肉植物を寄せ植えしたようなインテリア性の高いアイテムが多いです。このような、日本でやっているのとは異なるスタイルのショップを運営しノウハウを蓄積することが、会社全体に良いフィードバックをもたらすと考えています。


後編に続く