事例紹介
第5回 クラウドファンディング実施までの主な流れと活用例(購入型)

クラウドファンディングの実施に必要な工程と、主流となっているプロジェクトの業界やジャンルについて、クラウドファンディング総合研究所 所長の板越ジョージ氏に伺いました。
また、ユニークな活用例として、岡山県湯原温泉への誘致に成功した、旅館「八景」の事例をご紹介します。旅館「八景」の女将 上塩浩子さんにプロジェクト成功のポイントも伺いました。

板越ジョージ氏
工程 クラウドファンディング(クラウドファンディング)の主な流れ(購入型の場合)

クラウドファンディングのプロジェクト立ち上げから目的を実施するまでには、どのようなことが行われているのでしょうか。

クラウドファンディングプロジェクトを立案する

【ポイント】クラウドファンディングで何をするか、いわゆる企画を考えるうえで、その企画がクラウドファンディングに適しているか、クラウドファンディングを実施する目的は何かといったことをここでしっかり吟味することが重要です。

プロジェクトに合ったクラウドファンディング運営会社を選ぶ

【ポイント】クラウドファンディングサイトの特長を比較して、ご自身のプロジェクトに合う運営会社を選びます。比較するうえで確認するポイントは、振込日、決済方法、手数料、資金集めをする方法はどうなっているかなどです。各サイトの過去事例に、ご自身のプロジェクトに近いものがあるか、それらのプロジェクトが成功しているかを研究したうえで判断するようにしてください。

資金集めをする2つの方法 [目標金額100万円のプロジェクトを立ち上げた場合]
日本では多くのサイトが成功時報酬型(All or Nothing)を採用しています。

国内クラウドファンディング「購入型」の主流は「成功時報酬型(All or Nothing)」です。「成功時報酬型」は、期間中に目標金額を達成できた場合に運営会社へ手数料を支払えば、支援金を全額受け取ることができ、目標金額を達成できなかった場合には、1円も受け取れません。ただし、支援者は支援金を出す必要がなく、実施者はリターンを届けたり、運営会社に手数料を払ったりする必要もありません。
一方、「実施確約報酬型」は、目標金額を達成できなくても、集まった分の支援金を受け取れる仕組みになっています。支援者へは約束通りリターンを届ける必要があるため、集まった金額に応じてどのようなプロジェクトを実行するのかを、あらかじめプロジェクト概要にまとめておく必要があります。運営会社への手数料も必要です。

 

プロジェクトの内容を投稿し、クラウドファンディング運営会社の審査を受ける

 

【ポイント】運営会社を決定したら、タイトル、目標金額、開催期間、リターン内容などを決めておく必要があります。決めた企画内容をクラウドファンディングサイトへ投稿します。運営会社が信頼性や実効性を審査し、通常1週間ほどで結果が通知されます。


実例 「温泉旅館にスイートルームを」ユニークな企画で大人気に

ユニークな企画で成功したクラウドファンディングの実例をご紹介します。岡山県にある温泉旅館が立ち上げた、「あなたの田舎になりたい宣言!」というプロジェクトです。

画像:「あなたの田舎になりたい宣言!」プロジェクト 提供:CAMPFIRE
体験談 湯原温泉 女将の上塩さんに聞く、クラウドファンディング成功のポイント
プロフィール

湯原温泉 八景

女将


上塩 浩子氏

 

1963年生まれ、大阪府大阪市出身。1987年から湯原グランドホテルに総務として勤務、1996年に八景と名を変え女

将に就任。湯原温泉シャクナゲ会会長、美作三湯華の会副会長、湯原っしい実行委員会委員長を務めるなど積極的な

地域貢献を行っている。
生き活き岡山推進賞、観光事業功労者表彰も受賞。

 

ティ・アール・エイ株式会社 代表取締役 東享氏

「八景」は岡山県の北部にある湯原温泉の旅館です。岡山県は温暖な気候で野菜や果物がおいしく、また湯原温泉をはじめとした天然温泉があり、豊かな自然に囲まれています。「八景」はこうした豊かな土地で、野菜中心の“山里料理”でお客様におもてなしをしております。「八景」の魅力を、日本中のひとりでも多くの方に知っていただきたくて、クラウドファンディングの実施を決めました。
クラウドファンディングで注力したのは、何よりも想いが伝わるような文章表現を何度も推敲したことです。その際ポイントになるのは、「なぜクラウドファンディングをしたいのか?」を、実施者自身が明確にすることだと思います。そして、第三者に想いが明快に伝わるか?を整理することが大切です。
クラウドファンディング実施後の成果は13,646,000円、支援者は254人でしたが、加えてお客様から銀行振込みや持参で支援をいただき、最終的に目標金額の20倍である約2,000万円となりました。プロジェクト全体に必要な費用の100%をクラウドファンディングで賄う予定でしたので、資金の余剰は返礼品や旅館の補修に充てることができました。また、関東方面で知名度が上がってきており、当初の「日本中のひとりでも多くの方に知っていただきたい」という目標に近づくことができました。