実践
第6回 運営会社視点で見る、クラウドファンディング 運営会社(購入型)の選び方と成功のポイント

日本のクラウドファンディング運営会社であるGREEN FUNDING代表の沼田 健彦氏と、Makuake代表の中山亮太郎氏にお話を伺いました。クラウドファンディング運営会社の視点から、運営会社の選び方やクラウドファンディングを成功させるためのポイント、実施検討者へのアドバイスをご紹介します。
また、Makuakeで日本国内におけるクラウドファンディング史上、資金調達額1位を達成した電動バイク「glafitバイク」の事例もご紹介します。起案者であるglafit株式会社代表取締役の鳴海禎造氏にもお話をお伺いしました。

GREEN FUNDING by T-SITE代表 沼田 健彦氏
選び方 クラウドファンディング運営会社の選び方

これからクラウドファンディングを始めるなら、まずは支援者として体験してみてはいかがでしょうか。いろいろなクラウドファンディングサイトを見て、目に留まるプロジェクトや好きなジャンルのプロジェクトを支援してください。支援者の気持ちがわかると、起案者としても役立つ場面がきっとありますし、運営会社ごとの違いも感じられるかと思います。それでも起案する段階になったらどこを選ぶか悩むものです。サービスや強みはそれぞれ異なりますが、感覚的に「合う」と感じたクラウドファンディングサイトを利用すると良いと思います。

特徴 GREEN FUNDINGの強み

GREEN FUNDINGはTSUTAYAグループですので、リアルチャネルに強みがあります。たとえばクラウドファンディング中にTSUTAYA店舗に体験コーナーを設置して実際に手に取っていただいたり、完成した製品をTSUTAYAの店舗で販売したりしているケースもあります。もちろんすべてのプロジェクトが適用されるわけではありませんが、バイヤーも商品発掘の場として店舗に注目していますので、目に叶えば、販路が拓ける可能性があります。 また、プロデュースに力を入れているのも、特徴の一つです。GREEN FUNDINGはプロジェクトの成功率や資金調達額が業界内でも高くなっています。裏を返せば、成功が見込める、支援したくなるプロジェクトしか掲載しないということです。ですから、プロジェクト掲載数は、他の運営会社と比べて決して多くはありません。「審査が厳しい」と言われることもありますが、クラウドファンディングは魔法の杖ではないので、目標金額が高すぎたり、プレゼンテーションが未熟だと感じた起案相談には正直にその旨を伝えます。採用されたプロジェクトでもすぐに掲載するわけではなく、どうすればファンや支援者を増やせるか、長い目でじっくり話し合いながら、結果が出せるようサポートしています。クラウドファンディングの成功には運営会社のプロデュース力も関係していると言えると考えています。

・商品のユニークなポイント ・商品を作るクリエイターの思い、魅力を引き出し、最大限にアピールする方法をプロデュース、クラウドファンディング実施

GREEN FUNDINGでは、プロデュース力を証明する手段のひとつとして、自社でもクラウドファンディングを実施しています。過去に2度実施した、若手クリエイターによる映像や音楽と、俳優がコラボレーションする新感覚の朗読劇「Rayz Of Light」のプロジェクトも成功しています。1回目の支援総額100万円に対し、2回目はファンも増えて350万円ほど集まり、公演規模も大きくできました。

ポイント クラウドファンディングと相性がよいプロジェクトは?

クラウドファンディングはものづくりに真面目に取り組んでいる会社やクリエイターに向いている仕組みだと考えています。商売と同じで、クラウドファンディングも一発狙いではなく、真面目に続けていくことでひとつの事業として成長する可能性を秘めているのです。
GREEN FUNDINGで成功したプロジェクトでは、起案者がこだわりをもって製品づくりをしており、製品にも絶対的な自信がある、というケースが多いです。GREEN FUNDINGのコアユーザは、30代以上、とくに40~50代の男性が多くなっています。ある程度経済力にゆとりがあって、趣味にもお金を投じた経験があり、物の善し悪しもよくわかっている方々ですから、機能性・実用性に優れたこだわりの製品は成功する確率が高いです。周囲から「売れるわけがない」と言われるようなものでも、クラウドファンディングなら熱烈に欲しがる層が見つかるかもしれません。

アドバイス クラウドファンディングを検討されている方へ

クラウドファンディングは、製品を作る前に支援者を募ることで、リスクを減らすことができます。消費者の反応をリサーチできるうえ、支援者が集まれば元手をかけることなく売上に直結します。クラウドファンディングは、従来の商売とは全く違う新しい仕組みですが、資金不足や販路拡大などの課題を持つ中小企業にはマッチしていると思います。これをチャンスと捉えて挑戦してみると、新たな発見があるかもしれません。

プロフィール

株式会社マクアケ

代表取締役社長


中山 亮太郎氏

慶応義塾大学卒業。2006年に株式会社サイバーエージェントに入社後、メディア事業の立ち上げや、ベトナムでのベンチャーキャピタリストとしての赴任を経験後、2013年、株式会社マクアケを設立。代表取締役社長に就任。

株式会社マクアケ 代表取締役社長 中山 亮太郎氏
選び方 クラウドファンディング運営会社の選び方

1. 自分の友人や知人、ファン以外の、いわゆる新規顧客にも知ってもらえる運営会社か
2. 運営会社にどれくらいサポートしてもらえるか

 

運営会社を選ぶときは、この2点をしっかり見極める必要があります。まずはその運営会社の実績”、例えば運営会社自体にどれくらいの人が注目しているのか、成功しているプロジェクトはどれくらいあるか、といったことを確認しましょう。また、運営会社のサポート面では、コンテンツの魅力をうまく伝えるための支援や、そのアイデアを世の中に広げるPRの支援がしっかりしているがポイントです。

特徴 Makuakeの強み

Makuakeでは、起案者がプロジェクトを公開する前に、必ずMakuakeのキュレーターと「どういう魅力を打ち出していくか」という擦りあわせをして、企画の添削などもしています。起案者さんへ会いに行くこともありますし、最低限でもテレビ電話のアプリを使うなどして、できるだけ対面に近い形でミーティングをしています。また、インターネット広告やメディア事業を行っているサイバーエージェントのグループ会社なので、ウェブメディアとのつながりが強いのも特徴です。Makuakeで注目されているプロジェクトはさまざまなウェブメディアで取り上げられたり、こちらからもメディアが探しているような情報があれば共有をするようにしています。
クラウドファンディングほど中小企業にフィットするメディアは、これまでありませんでした。今まで中小企業の多くが「限られたリソースで情報を広めるには?」というプロモーションの課題を抱えていましたが、クラウドファンディングがその解決を助けるツールになっています。メディアとしての機能に加えて、支援者が知人に紹介するようなキュレーターの視点が入ることで、「プロジェクトのどこに注目するべきか」といった情報が整理されます。ゆえに他の支援者にとってもプロジェクトの魅力がわかりやすく、情報価値が高まるのです。

ポイント クラウドファンディングと相性がよいプロジェクトは?

いいアイデアを持っていたり、面白いことを仕掛けていける人や企業は、決して大都市圏に集中しているわけではなく、全国津々浦々に散らばっているのです。クラウドファンディングはいま、そのポテンシャルを引き出し、より自由に発揮できるようなサービスとして使われています。
例えば、Makuakeで日本国内におけるクラウドファンディング史上、資金調達額1位を達成した電動バイク「glafitバイク」の起案者は、和歌山県の中小企業です。プロジェクト成功後にさまざまなメディアで取り上げられ、それを見たメーカーから全国販売の声がかかりました。クラウドファンディングで、資金調達だけでなく、販路展開までつかむことができた成功事例です。

アドバイス クラウドファンディングを検討されている方へ

Makuakeがキュレーターの仕事に力を入れているのは、クラウドファンディングがSNSやブログほど簡単に取り組めるサービスではない分、起案者にはしっかりした伴走者が必要だと考えているからです。新しいことへの挑戦には、どのフェーズにおいてもさまざまなハードルがつきものですが、本当に価値のあるアイデアがそういったハードルに阻まれてスタートを切れなかったり、頓挫してしまうことはとてももったいないことです。そのハードルを少しでも下げて、アイデアを実現しやすくなるように、お蔵入りさせないようにというのが僕らのミッションですので、まずは気軽にお問い合わせいただき、キュレーターに相談してみてください。Makuakeは実現の可能性は判断しますが、面白さは判断しません。すべて平等にサポートしていきたいと思っています。

体験談 glafit株式会社代表 鳴海禎造氏に聞く、クラウドファンディング成功のポイント
プロフィール

glafit株式会社

代表取締役


鳴海 禎造氏

1980年和歌山県和歌山市生まれ。15歳のときから商売を始め、大学卒業後、カーショップ創業、のち自動車用品企画販売の(株)FINE TRADING JAPANを設立。中国、香港に事業展開。2017年電動バイクglafitをリリースし、同年glafit(株)を設立。和歌山電力取締役も兼任。

glafit株式会社 代表取締役 鳴海 禎造氏

クラウドファンディングを実施した理由は、glafitバイクのテストマーケティングのためでした。当時、製品はすでに完成していたので、市場でどのように受け入れられるのか、何台をどのくらいの期間で売れるのかを検討するのが目的でした。プロジェクト資金を賄うことは意識していませんでしたが、結果として、調達額は日本国内1位の記録である1億2,800万円、目標としていた1,000台もプロジェクト終了日をかなり前倒しにして達成できました。
クラウドファンディング成功は、プロジェクトページを見た支援者のハートを、いかにしてつかむかにかかっています。そのため、動画制作には特に力を入れました。スタイリッシュかつ利用シーンがわかりやすい動画を撮影するために、念入りに打ち合わせをし、プロジェクトメンバーのイメージを統一したのです。
もちろん、運営サイトのMakuakeさんの協力なくしてはglafitバイクの成功は語れません。製品発表会への助言はもちろん、プロジェクト開始前の各メディアへの告知や仕掛け、開始後の盛り上げなど、PRまわりの支援は強力でした。話題になったおかげで、プロジェクトの最中に全国のスーパーオートバックス様で先行販売が決定し、販路の開拓もできました。また、各メディアにも取り上げていただき、2017年日経優秀製品・サービス賞 最優秀賞 日経MJ賞を受賞できました。ベンチャー企業での受賞は珍しいとのことです。
クラウドファンディングは、我々のような地方の無名ベンチャーでも、大きく飛躍することができる機会だと思います。目的を明確にし、そのメッセージを打ち出すことができれば、消費者のみなさんにも伝わると思います。